【工業化学科】課題研究発表会 ~養殖プロジェクト進捗~

1月23日(月)に工業化学科3年生が課題研究の発表会を行いました。1年間の研究の成果を、2年生や先生の前で、わかりやすく丁寧に発表してくれました。3年生の皆さん、お疲れ様でした。次のステージでも、この経験を活かして頑張ってください。

さて、この研究は、魚と植物を同時に育てることのできる循環型農法“アクアポニックス”に挑戦するという新規プロジェクトです。設備の温調や電力を太陽光エネルギーによって確保し、実習で培った化学分析の技術を駆使して水質の管理を行います。この研究を進めるにあたり、好適環境水の開発者であり、閉鎖循環式陸上養殖の第一人者でもある、岡山理科大学工学部の山本俊政准教授からご指導を受けました。

 “アクアポニックス”とは、水産養殖(アクアカルチャー)と水耕栽培(ハイドロポニックス)を同時に行うことのできる、循環型農法です。魚の排泄物に由来する窒素やリン酸を、植物の成長に利用するという、画期的な方法で、近年注目されています。

本研究を進めるにあたり、工業化学科3年生を6つのプロジェクトチームに編成し、下記のようなスケジュールで研究に取り組みました。

 

各チームの進捗状況を以下に示します。

① 設備設計チーム

このチームでは、温室の設計と製作を行いました。製作にあたり、6月に見学した半田山植物園の温室を参考にしました。基礎となるコンクリートブロック上に単管パイプで温室を製作しました。高所作業が多かったので、安全に注意しながら作業を行いました。

 

② 水質浄化チーム

閉鎖循環式陸上養殖では、限られた設備と水で養殖を行うため、水生生物の飼育水に含まれる汚れ成分(主に窒素やリン)を微生物(バクテリア)や植物の働きで浄化し、水換えの頻度を極力減らすことが必要です。そこで、理大の養殖設備を参考にプレ養殖槽を製作し、9月からボラの養殖を開始しました。現在は硝化サイクルも立ち上がり水質も安定しているため、半年間水替えを行っていません。

 

③ 濾材製作チーム

 本校には、備前焼を製作するための電動ろくろや電気釜などの設備が整っており、以前から様々な作品を製作してきました。その経験を活かし、直径1~2cmの多孔質の球形濾材を備前焼で製作しました。今後は市販の濾材との性能比較や、廃棄される備前焼の再利用方法を検討したいと考えています。

 

④ アクアポニックス試作チーム

アクアポニックス設備の製作は、養殖槽と植物栽培槽を塩ビパイプやバルブを接合しながら組み立てました。水耕栽培用の容器は理大から提供していただいたものを使用しました。培地には、地植えタイプのハイドロボールと浮島タイプの2パターンを採用しました。最後にレタスとイチゴ、パッションフルーツを植え、水槽に川魚を入れ、稼働を開始しました。冬場の低温対策として、装置全体を市販のビニールハウスで覆い、電力は太陽光発電にてまかなうことも可能な設計にしました。植物も順調に育っています。

 

⑤エネルギー供給チーム

このチームでは太陽光エネルギーを利用した太陽熱温水装置をつくる研究を行いました。設計にあたり、電気に依存しない、汎用部品で製作可能、移設と増設が容易であることを基本軸としました。実際に水を貯めて、12月に温度を測定したところ、外気温は10℃前後でしたが、パイプ内の水温は16℃まで上昇しました。来年度は太陽光発電の導入を検討しています。

 

⑥ 水質管理チーム

閉鎖循環式陸上養殖において最も重要なことが水質管理です。そこで、山本准教授に水質分析の学習会を開催していただき、やり方を教わりました。測定項目は主に、水温、pH、DO、アンモニア、亜硝酸、硝酸、PN比、TOC、総硬度などがあり、定期的に測定し、モニタリングすることが必要であると知りました。学習したことを踏まえ、本校でも測定を開始しました。今後はセンサの設置や機器分析の導入を検討したいです。

 

今回のプロジェクトでは、各チームがそれぞれのテーマに取り組み、組織的な研究を行いました。ものづくりの体験や技術の習得が進むにつれ、次第に生徒の顔つきが変わり、真剣に取り組むようになりました。来年度は、設備のスケールアップを目指し、育てた魚や野菜を食べることを目標に、研究を継続したいと考えています。